松の葉で葺いた小屋―青棚で、結婚披露宴が開かれる
問…ここで何をしようというのだ?
答…七仙女に会うためだ。
双方の問答が終ると女性の家では垣根を取り除け、ソナ、ドラ、太鼓を奏して男性側一行を集落の中へ迎え入れる。この儀礼の中で山羊皮を身にまとった犬、顔に鍋墨を塗りたくったもの言わぬもの、顔には何も描かぬが、度のヒゲとメガネをかけた土皇帝の三人の扮装したものが登場するが、これまでに解ったことによると、この次第には次の二つの意味がある。一つは縁戚関係を結ぼうとする男性側の誠意の確認のためで、女性の家を尊敬しているかどうかを確かめるのである(犬やもの言
披露宴に厨房でドラを鳴らし客に料理を選ぶ
わぬものすら騙されはしまいぞ!という意味)。二つ目は悪霊を追散させ婚礼が平安無事に執り行われるようにすること(道塞簑ぎと尋問は悪霊が賑いに乗じて侵入するのを恐れてのため)「耳支歌」は雲龍県検槽郷の清朗や哨山などのペイ族の村に伝えられている。婚礼の中で行われる一種の祭祀でもあり、ペイ族の原始舞踊でもある。一九四九年以前には、この舞踊は検槽郷の全域の婚礼で行われていたものであるが、現在は、ただ右記の二つの村公所のみに伝えられており、よく知られている。一九九〇年に雲能県文化局がペイ族の民間芸術を調査中に発見したものである。
「耳支」はペイ語(音)で、漢語で言うともの言わぬ者あるいは愚鈍なものを意味している。歌は打歌、舞踊のことである。「耳支歌」を演ずるには、禁忌があって婚礼の時にしか行われず、悪魔払い、子供の生育を祈るために行われるのである。
耳支歌の演者は十二人で権成される。老官一人、老朷朷一人、耳支四人(その内二人は老人の子供)、春官一人、貨郎(贋薬売り)一人、騙人(婦女勾引)一人、花嫁一人、伴娘一人、指定人(演技の総指揮人、芝居師匠)一人である。これらの人たちは、それぞれ役柄に応じて化装をするが、その顔の作り方や服装もいずれもペイ族のものである。即ち春官は長杉(ペイ族老人が着るもの。訳註−単衣の長着物)を着て、枠だけのメガネ(鶏の卵の殻で作った)をかける。老官は長杉を着、切り紙の長いヒゲを付ける。老朷朷はペイ族の老人女性の服装をする。四人の耳支は頭から脚の先まで棕梠皮で覆い、顔の目と口だけは開けてありまるで猿そっくりの態である(耳支に扮した老は見聞人に誰が扮しているのかを知られないようにする)°
婚礼での耳支歌の上演は二回に分けられる。一回目は、披露宴の席で行われ、これは主に厄払いの行事である。二回目は夜間房の時に演じられる。ここでの目的は、招福、生殖、子宝に恵まれることの願いである。
ペイ族の披産宴の客の接待は、松の枝で作った青棚と称される小屋で行われる。小屋の中には、一般に五脚のテーブルを二列に置く。二列の間が通路となる。全招待客が着席すると、ソナが三回、長く吹かれ(音出しと言う)、
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